ペットの皮膚病に関するコラム

バンコクの衛生環境とペットの皮膚病(反省編)

独立して書いているブログからの加筆転載です。

バンコク、特に日本人が多く住むエリアはは多くの方が想像しているほど見た目は汚くないです。
しかし、私が想像していた以上の衛生概念の薄さのようなものは、5年目になってようやくその本当のレベルがわかってきたような気がします。
日本の渋谷で臨床していた時とまるで違う確率で現れる感染症、このあたりではさすがにそこまで見ないかなと思っていましたが、5年目にして改めてむしろ感染症の威力について思い知らされる事例があったので自分への戒めとしてここに記しておこうと思います。


まず前提として、東京では日常的に真菌症のひどい成犬のケースにしょっちゅうは遭遇しません。


ブリーダーからきたばかりの犬などにはまあまあありますが日本はグルーミングサロンもペットホテルもどこでも衛生的だしドッグランに来る子も綺麗だし予防もいきわたっています。

何よりも家が綺麗だし、トイレを拭いたぞうきんで机をふくメイドもいません。 

 
当院の皮膚科アプローチは、特にアトピー性皮膚炎やアレルギー症に関して、フランスや日本での皮膚科最前線を取り入れたハイブリット治療で、ぶり返しの少ないアプローチを提案しているのですが、長く腸活を続けて洗浄や保湿をしても、時折大きくぶり返すケースが多くはないけれどありました。
そんな長引いていた皮膚症の子のうち、一時はよかったのですが途中から悪化して長引いていた子がいて、タイローカルの病院のペットホテルに預けて、抗生物質と劇薬に近い抗真菌薬(その病院はどの皮膚症にも処方している)の洗浄を行ったところ、劇的な症状の改善が見られたということでした。
組み合わせ的にはとても古典的で懐かしい感じの処方なのですが、私が新人の頃はまだまだ外飼の子も多く、どんな皮膚症でも強い抗真菌シャンプーで洗って広域の抗生物質をいきなり処方していたいた時代でした。
その話を聞いてすぐに私は
「ああ、途中から真菌との二重感染になってたんだ!」と気付きました。
(他院の衛生環境をとやかく言うのは気が引けたのでホテルが楽しくて免疫力があがったのかもしれませんねと伝えまし)

というのもそのローカルの病院は英語話者のサークルやコミュニティでは頻繁に「いくたびに何かに感染する」と多くの人が情報を寄せていて、こちらへの転院の際にはまず感染を疑って検査をしておりまあまあの確立でで真菌やダニをもらってくる、またそこでは症例の多くが野良猫、野良犬で衛生に関する懸念に関する口コミを頻繁にみる病院だったのです。(前々からお客様からもよくそういう情報はいただいていました)
よくよく記憶をたどると、長引いた子のうちほかにもそこに出入りがあった子の心当たりがあり、点と点が一気に結びつきました。
真菌症は、うつっても健康な皮膚なら問題を起こさないことも多く、基礎疾患があったりアトピー性皮膚炎の子は非常に重篤になりやすく、そこに出入りしてるペットからもらっててももらった先の子は症状がないことだってあります。
日本の環境では特に成犬なら真っ先に疑うことのない真菌、
この国ではまず普通に綺麗そうに見えるところに出入りしていても暮らしててもらう、
実際にその方もその病院に通わせているペットとの接触もしていたわけで、
もう少し細かいヒヤリングを私はするべきだったのです。
抗菌剤と劇薬の抗真菌薬シャンプーの組み合わせは盲滅法汚い環境のペットに試す、日本の一昔前の治療法だったのですが、その病院は特に感染源ともなっている病院だったから経験則で反射でその組み合わせになったのでしょう。
深く深く様々な角度で反省するケースになりました。


日本では抗菌剤はいきなりは使わないし、抗真菌薬を使うなら検査をしてから進むことが昨今では主流ですがあきらかなパンデミックエリアなら確かに初めからそれでも良いのです、20年前私がみた現場そのもののように。
ここは日本ではない、当たり前ですが。
余談にはなりますが、


屋台などで人糞栽培の野菜を食べ続けて肝炎になるような人が出ることも知りました。私の常識はここでの常識ではない、当たり前ですが今一度肝にめいじようと思いました。